石屋のないしょ話

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京都と雅楽と言葉の不思議

「その時間は別件で打ち合わせが入ってまして・・・」などと日常で頻繁に使う「打ち合わせ」。

さて、この「打ち合わせ」。「打ち」と「合わせる」というわけですが、文字通り「打つ」すなわち打楽器を打って「合わせる」、日本の雅楽からきたことばです。

雅楽器による管弦楽(オーケストラ)は、三管(吹きもの)・二弦(弾きもの)・三鼓(打ちもの)から成ります。でも、西洋音楽のような指揮者はいません。では、どうして演奏を合わせるのかというと、打楽器の中の鞨鼓、つまり和の鼓のルーツのような楽器が指揮者に代わる役割をもち、演奏をリードすることになっているのです。

リズム楽器が演奏のベースとなるのは、西洋音楽も同じです。管楽器というのは、どうしても先へ先へと進みがちになるそうです。雅楽というものは、楽器ごとに譜面が違います。それぞれの楽器が違う譜面を見ながら、一つの曲を演奏するのです。そこで、演奏前に微妙な演奏法の違いを調整するのですが、その際は打楽器が優先して約束事を決めます。リハーサルでは打ちものの鞨鼓にオーケストラ全員の息をぴったり合わせていきます。

これが「打ち合わせ」の語源だそうです。

ちなみに、銀行の「頭取」は雅楽の管弦奏者中、一番偉い人を指す言葉が語源です。管弦の各パートリーダーを「音頭」と呼び、「音頭取り」という言葉はここからきました。その「音頭取り」の最高峰が「頭取」ということになります。

「ろれつがまわらない」は、雅楽の「呂」音階、「律」音階からです。有名な大原三千院の呂川・律川は仏教音楽である声明から名付けられたものですが、声明も雅楽がベースとなっています。

「二の句が継げない」という言葉も、雅楽の朗詠から出た言葉で、朗詠は一の句・二の句・三の句があります。音の低い一の句の終わりから、急に音階が高くなるニの句は「継げない」で皆、苦労します。

さらに極め付けは「野暮」です。雅楽の代表的楽器ともいえる笙ですが、十七本の竹管を円く束ね、吹いても吸っても同じ音が出せるパイプオルガンのような音色です。これには、十七個のリードがついていたのですが、日本ではいつのまにか二つの音が使われなくなってリードがはずされてしまいました。その二つの音が「也」と「毛」すなわち「や・もう」で、それが変化して「やぼ」になったのです。風流でない野暮な音とされたそうですが、雅楽はすごい世界ですね。

 

ご参考にまでに・・・。