- 石屋のないしょ話
石材の種類で失敗しない選び方!建築や外構に最適な素材と特徴を解説
「石材の種類が多すぎて、どれが適しているのかわからない」「外構に使うなら強度や耐久性はどう比較すべき?」と悩む方は多いはずです。実際、建築に使われる天然石や人工石は100種類以上とも言われ、その性質は岩石の分類や形成過程、産地によって大きく異なります。見た目の模様や光沢の違いだけでなく、吸水率や圧縮強度、経年変化の傾向など、選定時に注目すべきポイントは多岐にわたります。
この記事では、花崗岩や安山岩、ライムストーン、砂岩、凝灰岩、石灰岩などの代表的な建材石材について、模様や色調、耐久性、吸水性、硬度、施工性などを実際の用途別に比較しながら、専門家目線で丁寧に解説します。産地による性質の違いや、屋外・屋内に向いている石材の分類も網羅しているため、初めて石を選ぶ方でも安心して読み進めていただけます。
目次
建築石材の種類と特徴!外構・内装・床など部位別に最適な石材とは
石材の種類一覧!日本や海外の代表的な石など
花崗岩・安山岩・斑レイ岩などの建築石材種類を比較
建築に用いられる石材の中でも、花崗岩、安山岩、斑レイ岩は非常に重要な役割を担っています。それぞれが持つ素材の性質や用途は大きく異なり、使用目的や施工部位によって選定することが求められます。
花崗岩(かこうがん)は、地下深くでマグマがゆっくり冷えてできた「深成岩」に分類されます。主に石英、長石、黒雲母などの鉱物で構成され、非常に高い硬度と耐久性を持ちます。吸水率が低く風化にも強いため、屋外使用にも適しており、墓石・記念碑・建築の外壁などに広く利用されています。また、表面を磨くことで美しい光沢が生まれ、高級感ある仕上がりになります。
安山岩(あんざんがん)は、火山岩の一種で中硬度の特徴を持ちます。斑状組織と呼ばれる黒い斑点が表面に浮かび、色調は黒から濃灰色が一般的です。耐久性と滑りにくさのバランスが良く、屋外の床材、外構、墓地周辺の敷石として利用されることが多くあります。コストも比較的抑えられることから、一般住宅向けにも人気があります。
斑レイ岩(はんれいがん)は、花崗岩に似た深成岩ですが、より細粒な結晶構造で、硬度・吸水率の点でも優れた特徴を持ちます。表面は濃いグレーから黒系でシックな印象があり、重厚感を求められる場面で重宝されます。中国産やインド産が多く流通しており、石畳や門柱などに利用されることが一般的です。
以下は、それぞれの石材の特徴を比較したものです。
石材名 | 分類 | 主な色調 | 吸水率(%) | 硬度(モース硬度) | 比重(g/cm³) | 主な用途 |
花崗岩 | 深成岩 | 白系、ピンク系 | 0.15〜0.4 | 約6〜7 | 約2.63〜2.75 | 墓石、外壁、床材、記念碑など |
安山岩 | 火山岩 | 黒、濃灰色 | 0.25〜0.5 | 約5〜6 | 約2.50〜2.60 | 外構、敷石、石碑、庭石など |
斑レイ岩 | 深成岩 | 黒、濃グレー | 0.1〜0.3 | 約6〜7 | 約2.70〜2.95 | 舗装材、門柱、玄関周りなど |
日本の国産石材と産地ごとの特徴!真壁石・庵治石・大島石
日本国内で採掘される石材は、品質の高さ、加工精度、信頼性の面で非常に評価されています。特に、真壁石・庵治石・大島石といった代表的な国産石材は、墓石・記念碑・建築用として長年にわたり全国で採用されてきました。それぞれの石材には独自の魅力と産地の文化的背景があり、施工対象や使用目的に応じて選ばれています。
まず真壁石(まかべいし)は、茨城県桜川市を中心に採掘される白御影石の一種で、日本国内での流通量が多い石材です。色調は淡いグレー系で、粒子が細かく均一な石目が特徴です。吸水率は約0.22%、比重は約2.63g/cm³、モース硬度は6.5前後と高く、風化に強く、長期的な美観を保ちやすいとされています。墓石用としてだけでなく、和風建築の外構や石塀にもよく使用されています。
次に、庵治石(あじいし)は、香川県高松市の庵治町と牟礼町を中心とする一部地域でしか採れない希少な花崗岩です。最大の特徴は「斑(ふ)」と呼ばれる独特な模様で、光の当たり方によって表情を変える石目は世界でも類を見ない美しさを持っています。極めて細かい結晶で構成されており、吸水率は0.08%前後と非常に低く、風化や変色に対しても極めて強いです。高級墓石の代名詞として扱われることが多く、近年では海外からの注文も増えています。
大島石(おおしまいし)は愛媛県今治市の大島地域で採掘される花崗岩で、やや青みがかった色合いが特徴です。庵治石に次ぐ高級石材とされ、吸水率は約0.12%、比重は約2.68g/cm³、モース硬度は6.5以上と高く、耐久性と加工性のバランスが非常に優れています。経年変化が少なく、美しさが長く続くことから、寺院の石垣や高級住宅の外構材としても採用されており、全国的に高い信頼を得ています。
以下に、主要な国産石材の特徴を整理しました。
石材名 | 産地(都道府県) | 色調 | 吸水率(%) | 比重(g/cm³) | 特徴と用途 |
真壁石 | 茨城県 | 淡いグレー | 約0.22 | 約2.63 | 墓石、石塀、外構。価格と品質のバランスが優秀。 |
庵治石 | 香川県 | 灰色に斑模様 | 約0.08 | 約2.65 | 高級墓石の代表格。風化に強く独特の光沢を持つ。 |
大島石 | 愛媛県 | 青みがかった灰色 | 約0.12 | 約2.68 | 耐久性と加工性が高く、格式ある建築に多用される。 |
建築石材の種類と特徴!外構・内装・床など部位別に最適な石材とは
外構・外装におすすめの石材!耐久性・色合い・滑りにくさで選ぶ
外構や外装は、建築物の第一印象を決定づける重要な要素です。さらに、常に風雨や紫外線などの自然環境にさらされることから、石材選びには「耐久性」「防滑性」「色合いの持続性」などが求められます。見た目の美しさだけでなく、長期的に美観を維持できるかどうかも判断材料となります。
耐久性の観点では、花崗岩が最も広く使用されています。硬度が高く、吸水率が低いため、雨水や霜による凍害にも強く、風化しにくい特性があります。外構の階段やアプローチ、駐車場の床など、人や車の重みに耐える箇所にも適しています。表面仕上げとしては、バーナー仕上げやビシャン仕上げが採用されることが多く、滑りにくく安全性も確保されます。
色合いに関しては、グレー系や黒系の御影石が人気で、落ち着いた印象を与えながら汚れが目立ちにくい利点があります。白系の石材は高級感がある反面、経年変化で黄ばみが目立つこともあるため、設置場所や使用頻度を考慮する必要があります。
また、雨天時の滑りにくさを考慮するなら、表面に粗さを持たせる「サンドブラスト仕上げ」や「ジェットバーナー仕上げ」が効果的です。公共施設や高齢者の通行が多いエリアでは、安全面への配慮から防滑性能の高い加工が必須です。
代表的な外構・外装向け石材の比較は以下の通りです。
石材名 | 主な産地 | 吸水率(%) | 色調 | 表面仕上げ例 | 防滑性 | 耐久性 | 用途例 |
G654(中国) | 中国福建省 | 約0.28 | 黒系 | バーナー、ビシャン | 高 | 高 | 駐車場、門柱、アプローチ |
真壁石 | 茨城県 | 約0.22 | 白系、グレー系 | サンドブラスト、磨き | 中 | 高 | 塀、外壁、階段 |
インド黒 | インド | 約0.12 | 黒~ダークグレー | 磨き、バーナー | 中 | 非常に高い | 高級外構、石張り壁面 |
床や玄関・室内に適した石材!滑り止め加工・手入れのしやすさ
室内や玄関まわりの床に石材を使用する際には、滑りにくさとメンテナンスのしやすさ、さらに耐摩耗性が重要な選定基準になります。これらのエリアは日常的な歩行や荷重がかかるうえ、汚れや水分の影響を受けやすいため、性能と美観の両立が求められます。
人気が高いのは、表面がざらついていて滑りにくく、かつ掃除しやすい仕上げが可能な「ライムストーン」や「スレート(粘板岩)」などです。特にスレートは、天然石ならではの風合いを残しながらも比較的安価で、吸水率も低め。水に濡れても滑りにくいという特性があるため、玄関土間や水回りにも適しています。
また、フローリングとの調和やインテリア性を考慮する場合は、ベージュ系やグレー系の石材が無難で、空間に落ち着きを与えます。硬質な石材でも、鏡面仕上げではなくマット調の仕上げにすることで滑りにくく、視覚的にも自然な印象を与えられます。
以下は、室内床材としておすすめされる石材の比較です。
石材名 | 分類 | 吸水率(%) | 色調 | メンテナンス性 | 滑りにくさ | 適した用途 |
ライムストーン | 堆積岩 | 約0.20~0.35 | ベージュ、グレー | 高 | 中 | 室内床、リビング、トイレなど |
スレート | 変成岩(粘板岩) | 約0.18~0.28 | 黒、青灰色 | 高 | 高 | 玄関土間、洗面所、水回り |
トラバーチン | 石灰岩系 | 約0.30~0.40 | 生成色系 | 中 | 中 | ホール、廊下、アクセント床材 |
石材ごとの特徴と選び方!初心者が失敗しない比較ポイント
模様・色・光沢の違いで印象はどう変わる?
石材選びの第一歩として重要なのが、模様や色、光沢といった視覚的要素の違いです。建築やインテリアデザインでは、空間全体の印象を決定づける大きな要素になるため、見た目の印象を軽視することはできません。特に近年はSNSや住宅展示場を通じてデザイン意識が高まり、「空間の世界観に合った石材選び」が求められています。
まず、模様(石目)には大きく分けて以下のタイプがあります。
- 斑模様(まだら)…花崗岩(御影石)などに多く、力強く重厚感がある
- 縞模様(ストライプ)…粘板岩やスレートに見られ、動きのあるデザインを演出
- 均一模様(ほぼ模様なし)…大理石の一部や人工石など、モダンな空間に適す
模様によって空間の「静」と「動」の印象が変化し、狭い空間では細かい模様、広い空間では大きな石目の方が視覚的に美しく映える傾向があります。
次に色の選び方です。石材には以下のような代表的な色調があります。
色の種類 | 主な石材 | 空間への印象 | 主な用途 |
白系 | 白御影石、大理石 | 清潔感・開放感 | 玄関、浴室、商業施設内装 |
黒系 | 黒御影石、インド産グラナイト | 高級感・重厚感 | 墓石、外構 |
グレー系 | 庵治石、真壁石 | 落ち着き・調和 | 和風建築、外壁 |
ベージュ系 | ライムストーン | 温かみ・柔らかさ | 床材、エントランス |
青み系 | ブルーストーン | 静けさ・個性 | 特殊空間、現代建築 |
また、光沢の違いも空間の雰囲気を大きく変えます。石材は以下の3タイプに加工されることが多いです。
- 鏡面仕上げ(ツヤあり):華やかで高級感があり、主に内装向け。
- バーナー仕上げ(マット調):防滑性があり外構向き。ラフで自然な風合い。
- 水磨き仕上げ(半光沢):落ち着いた印象で、和風・洋風問わず使いやすい。
模様・色・光沢をうまく組み合わせることで、設計者の意図通りの空間演出が可能になります。例えば「和の趣」を大切にする場合は、真壁石のような均一な灰色+水磨き仕上げを選ぶことで、静かで落ち着いた雰囲気が演出できます。一方、「非日常感」を強調したい商業施設では、黒御影石の鏡面仕上げを使えば高級感が際立ちます。
初心者が失敗しないためには、次の3つのポイントを意識すると安心です。
- 使用場所に合った色調と模様を選ぶ(例:汚れが目立たない外構にはグレー系)
- 周囲の素材と馴染むか確認(床材・壁材との色のバランス)
- 小さなサンプルではなく、実際の施工例を見て決める
色や模様だけでなく、太陽光や照明との関係も考慮すれば、空間全体が調和し、視覚的満足度の高い仕上がりとなります。石材カタログやショールームでは、屋外・屋内での見え方の違いもチェックしておくとよいでしょう。
吸水率と劣化の関係!雨・湿気への耐性比較
石材は自然の素材であり、吸水性を持つものがほとんどです。吸水率の高低は、屋外使用時の耐久性、風化、変色、さらにはメンテナンス性に大きな影響を与えるため、石材選びにおいて見落としてはいけない重要ポイントです。
まず、石材の吸水率とは、石材が水分をどの程度取り込むかを示す指標で、一般的にはパーセンテージ(%)で表されます。吸水率が高い石材は、雨水や湿気を多く含みやすく、結果として凍害やカビ、変色、劣化のリスクが増す傾向にあります。特に寒冷地や湿潤地では注意が必要です。
以下の表に、代表的な石材の吸水率と使用適正をまとめました。
石材名 | 吸水率の目安 | 使用適正エリア | 備考 |
花崗岩(御影石) | 0.2~0.5% | 屋外・屋内すべて | 低吸水率で高耐久 |
大理石 | 0.4~1.5% | 室内のみ | 屋外では変色や劣化しやすい |
ライムストーン | 1.0~3.0% | 屋内の床や壁 | 高吸水のため防水処理が必要 |
砂岩 | 1.5~5.0% | 屋内限定 | メンテナンスが必要 |
スレート | 0.3~1.0% | 屋内外両用 | 吸水率と耐候性のバランス良好 |
花崗岩は非常に吸水率が低く、水を弾く性質があるため、墓石や外構など風雨に晒される場所での使用に最適です。一方で、大理石やライムストーンは吸水率が高く、雨に濡れ続けると変色・劣化が起こりやすいため、使用場所を慎重に選ぶ必要があります。
また、吸水率が高い=劣っているというわけではありません。たとえば、ライムストーンは独特の温かみがあり、室内空間の床材や壁材としては非常に人気があります。吸水性が高い場合でも、防水・防汚コーティングを施すことで長期的に美しさを維持することが可能です。
劣化リスクに関連する代表的な現象には以下のようなものがあります。
- 白華(エフロレッセンス):吸水した水分が表面に塩分を析出させ、白い汚れになる
- クラック(ひび割れ):内部に侵入した水分が凍結膨張し割れる
- カビ・苔の発生:湿度が高い場所で表面に有機物が付着すると繁殖しやすい
これらを防ぐためには、選定時の石材の吸水率を確認し、用途に応じた防水処理やメンテナンスが必須です。特に浴室や玄関ポーチ、アプローチなど常に水分に触れる場所では、施工前に適切な撥水処理を行い、定期的な洗浄を行うことが推奨されます。
まとめ
石材の選定は、建築や外構、墓石などの用途によって求められる性能や見た目が大きく異なります。本記事では、代表的な石材である花崗岩、安山岩、石灰岩、砂岩、ライムストーン、粘板岩などの特徴や違いを、模様や色調、吸水率、硬度、加工性といった観点から詳しく比較してきました。
たとえば、雨や湿気の多い地域で屋外使用を前提とするなら、吸水率の低い花崗岩や安山岩が適しており、逆に内装や床材としては、表面の光沢や滑り止め加工のしやすさを重視したライムストーンやスレートなども選択肢に含まれます。実際のデータでは、花崗岩の吸水率は0.2%前後、圧縮強度も200N/mm²を超える例が多く、耐久性の高い建材として長年利用されています。
また、石材の種類によって価格や流通量にも差があり、同じ用途でも国産石材と海外産石材では施工費やメンテナンス性に影響が出るケースもあります。失敗を避けるには、目的に応じた性能や美観、コストバランスを総合的に判断することが重要です。
よくある質問
Q.吸水率が高い石材はどんなリスクがありますか?
A.吸水率の高い石材は、雨や湿気によって水を含みやすく、凍結によるひび割れや劣化の原因になります。特に外構や屋外階段に使用する場合、防滑性とともに吸水性の低さが重要です。例えば、花崗岩の吸水率は0.2%前後、砂岩は1.5%以上のものもあり、屋外向けには前者が適しています。吸水性は石材の耐久性や施工後の美観にも大きく影響するため、施工場所に応じた選定が不可欠です。
Q.墓石に使われる石材はなぜ花崗岩が多いのですか?
A.墓石には長期にわたり風雨にさらされるため、耐久性と美観を兼ね備えた花崗岩が最も多く使用されています。特に国産の庵治石や大島石は目が細かく水を通しにくく、劣化しにくい点が評価されています。また、花崗岩は圧縮強度が200N/mm²以上と非常に高く、加工性もあるため、細かな彫刻や文字入れが可能です。耐久性と宗教的な意味合いを両立できるため、墓石に最適な石材として選ばれ続けています。
Q.店舗や商業施設でおすすめの石材はありますか?
A.商業施設や高級店舗では、光沢があり存在感のある大理石やインド黒御影がよく選ばれます。色調や模様のバリエーションが豊富で、ブランドイメージに直結する内装演出が可能です。たとえば、大理石は光沢と石目の美しさでラグジュアリー感を演出し、インド黒御影は深みのある色調と高い耐久性が特徴です。費用は1平方メートルあたり約5万〜15万円程度と高めですが、空間の価値を大きく高める効果があります。
会社概要
会社名・・・有限会社北尾石材
所在地・・・〒606-8225 京都府京都市左京区田中門前町67
電話番号・・・075-781-9523